行動経済学の損失回避性とは?

行動経済学という分野では、人間を損失回避的である、といういう解釈で進んでいきます。これはざっくりいうと、同じ金額の場合、得するよりも損する方が動揺する、という意味です。

こんにちは。

金融教育研究所の佐々木裕平です。

 

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行動経済学上の人間は、損失回避性を持っている

伝統的な経済学では、人間は合理的な生き物として登場します。

こうしておくと、計算などが簡単に行えるので、理論モデルを作りやすいからなのかもしれません。

一例をあげると、合理的な人間の場合、お金から得られる効用(幸せなど)がずっと同じ状態です。

どういうことか?

一円あたりの効用は、単調に同じではなく、逓減していく?

例えば、五十万円を投資で儲けたとします。

仮にこのうれしさを50点とします。

じゃあ、百万円儲けたら、二倍の100点うれしいか?

というと、そうではない、と考えられます。

確かに五十万円よりも百万円の方がうれしいですが、単純に二倍うれしくはないのですね。

おそらく平均的な人間では、二倍以下の嬉しさになると思います。

反対に合理的な人間の場合は、五十万円の十倍の金額の五百万円を手に入れると、十倍うれしいとなります。

しかし、私たち人間の平均は、ほとんどの人が、五十万円よりはうれしいが、とても十倍まではうれしくない、と思われます。

この説明がわかりにくい人は、焼き肉で考えてみましょう。

一枚目のお肉と、十枚目のお肉では、おいしさ・感動が違いますよね。

そして20枚目と21枚目では、おいしさ・感動の差が最初の一枚目と二枚目の感動よりも小さくなっていることに気が付くでしょう。

真に合理的な人間なら、21枚目のお肉は、一枚目の21倍のおいしさ・感動を受けるはずです。

実際の人間は、損失に対しては、利得よりも過度に反応する

すなわち現実の人間は、利得に対しては、大きく儲かっても、小さく儲かっても、あまり嬉しさに差がないのですね。

こういうのを、別の角度から見ると、感応度低減性といいます。

一方、損失に対しては、小さな損失に対して、非常に大きなダメージを心に受けます。その一方で、利得と同じように、損するほどに、ダメージが和らいでいきます(直線状にダメージが増えない、という意味)。

やはり感応度低減性が見られます。

ということは、どういうことでしょうか。

 

 

利得には確実性を、損失にはリスク追求的になる

つまり、大きな得も小さな得も、嬉しさがあまり変わらないので、少ない利益で確定しやすい

一方で損失には、小さな損でもとてもイヤ。しかし、大きな損になるほど、心の追加的なダメージが少なくなっていく。

そのため、できるだけ小さな心のダメージが回復するように賭けたい衝動にかられます。

  1. 一例:含み損だけど、損切をしないで、もうちょっと値段が戻ったら売ろうと思って、放っておく
  2. 損失が出ているけど、いまは売らないで、塩漬けにしておこう(塩漬けにすることで値段がさらに下がっても、追加的な心理的ダメージが小さいから)

平均的な人間は、投資で損をしやすい

まとめます。

人は利得に対しては、少額で利益を確定したがります。

  • つまり、得するときは小さく儲ける

一方で、損失に対しては、より大きな被害が出るまでまったり、より一か八かの行動に賭けたがります。

  • つまり、損するときは、大きく損する

すなわち、トータルで見ると、得<損という図式になるのですね。

そのため、現実の人間、つまり私たち投資家は投資で損をしやすいのです。

実に人間というのは面白いものです。

それではまた。

 

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