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配当金や分配金(インカムゲイン)と売却益金(キャピタルゲイン)、どちらを重視して投資するのがいいでしょうか? →結論、どっちも同じお金なので、変に区別しないで合理的に判断しましょう
こんにちは。山口県岩国市の中立公正な立場から金融教育情報を発信する非販売系ファイナンシャルプランナーの佐々木裕平です。
タイトルの質問は、しばしば投資家が迷うことではないかと思います。
結論を先に申しますと、合理的に考えた場合、投資においてインカムゲインとキャピタルゲインのどちらを重視すべきか、という問題には「どちらも重要であり、区別して考えない」と答えることになると思います。
ついつい、区別して考えたくなるものですが・・・・・・一体、どういうことなのでしょうか、見てみましょう。
まず、用語を見てみましょう。一般的にゲイン(gain)とは「得る・稼ぐ」といった意味合いで使われます。
一方でインカム(income)は「定期的に入る収入」で、キャピタル(capital)は「資産」です。
すなわち、投資においては一般的に、インカムゲインとは定期的に入る収入のことを指します。
例えば、投資信託からの分配金や株式からの配当金がそれに当たります。
そしてキャピタルゲインとは、値上がり差益のことを指します。
こちらは、安く買って高く売った時に、その差額が差益となるものです。
このように、性質から違うものですが「合理的な投資」として考える場合には、この両者は「同じお金」として考えます。なぜでしょうか? ちょっと違和感があるかもしれません。
メンタルアカウンティングにご注意。お金に色はついていないから「同じお金」で考える
確かにインカムゲインとキャピタルゲインでは性質が異なります。
ですから、投資を考える際には、どちらかを重視する戦略を考えることは重要かもしれません。
ただ、それと同時に知っておきたいことがあります。
それは「お金には色がついていない」ということです。
行動経済学という分野では「メンタルアカウンティング(心の会計)」という言葉で表現されます。
どのようなものでしょうか。
例えば、Aさんが「知人からもらった宝くじ」でたまたま1万円が当たったとします。
この時、Aさんとしては「棚からぼたもち」な気持ちですから、財布のひもは緩い状態になりがちです。
一方で、Aさんが初めて働いて得た初任給の中の1万円があるとします。
初任給のの1万円に対しては、慣れない仕事で頑張ってようやく得た1万円という気持ちがありますので、財布のひもは固くなりがちです。
誰しもAさんのような気持ちになった経験は、あるのではないでしょうか。
ただ、冷静に考えますと、どちらの1万円にも色はついていません。
手に入った瞬間に「同じお金」として存在するだけです。
にもかかわらず、その手に入った過程によって「違うお金」のように感じてしまうことがあるのです。
それでは、話を投資に戻しましょう、
インカムゲインとキャピタルゲインです。
それぞれ、お金が入ってくる過程が異なります。
そのため、気持ち的にはインカムゲインとキャピタルゲインどちらを重視するかは、その過程や個人の考え方で変わってきます。
しかし、それは冷静に考えると「同じお金」に色をつけて頭の中で分けているだけ、に過ぎないのかもしれません。
そのため、合理的な投資を考えた場合にはインカムゲインとキャピタルゲイン、それぞれの収入に対しては「同じお金」として考えることが重要だと考えられます。
なんとなくインカムゲインの方が嬉しい? 元手・元本が減っていないから?
ただ、人は根っから合理的なわけではありません。
割と原始的な行動形式が残っている生き物でもあります。
そのためインカムゲインの方が「なんとなくうれしい」傾向にある人もいます(もちろんキャピタルゲインの方が嬉しい人もいます)。
ちなみに筆者は、どうしてもインカムゲインの方が嬉しい気持ちになってしまいます。
なんとなくお得感を感じてしまうのです。
つまり「頻繁に売買すると損するかもしれない。
損して後悔するくらいなら、放っておいても定期的に収入のある配当金や分配金を受け取る方が嬉しい」……。
と感じているのかもしれません。
ただこう考えると、ついつい分配金利回りや配当の良い投資銘柄に集中投資してしまいがちです。
もちろん必ずしも悪いことではありません。
ただ、投資の基本は長期分散投資ですから、集中しすぎるのは少し考えものかもしれません。
現役世代の長期分散投資で重要なことは? →複利効果を活かすこと。ほったらかしに徹すること。
長期分散投資では複利効果を活かすことも大切です。
複利効果とは、元本に対して、利益を再投資することにより、さらにお金を大きくしやすくするものです。
長期での資産形成に欠かせない考え方です。
iDeCoや企業型確定拠出年金・新ニーサなどの税制優遇制度を利用していない場合は、一般的に利益から税金がおよそ2割引かれます。
これに対して「2割程度なら別にかまわない」「収益がプラスになっているなら、別に大した問題ではない」という考え方もできなくはありません。
ただ、一方で次のように考えることもできます。「収入は毎月の給与収入があるのだから、必ずしも投資からの利益をいますぐ(2割目減りした状態で)受け取る必要はないな」と。もう少し合理的に考えた場合には「いま(2割目減りした状態で)受け取るよりも、それを全額、再投資に回して、複利効果を発揮させてより大きくしてから、必要な時(老後など)に受け取った方がよさそうだ」とも考えられます。
現役世代ではインカムゲインとキャピタルゲイン、どちらにせよ「同じお金」として再投資することがより合理的かもしれません。
もちろん、税制優遇制度を利用して内部で再投資できる仕組みの方が理論上はより有利だと考えられます。
iDeCoや新NISAに回せる余裕があるのなら、ぜひともそちらから優先して積み立て投資や一括投資を検討してほしいと思います。
シニア時代などの資産を取り崩す時期は? →分配金のある投資信託ではなく、無分配型のインデックス型投資信託も視野に入れるとより合理的に
ただ、資産を大きくするだけでは、絵に描いた餅ならぬ、「画面上に描き出された数字」ですので、いずれ取り崩していかなければいけません。
シニアの方に人気の投資信託として、毎月分配型というものがあります。退職金などの運用先として大変な人気を誇っていました。
しかし、元本を取り崩していくことがあるので「合理的な資産形成に向かないのでは」という見地からかつてほどの人気はないようです。
とはいえ、人の気持ちからするとやはり「(たとえ、自分の元本が返ってくるだけだとしても)毎月インカムゲインがあるのはうれしい」ものです。
そのため、ついつい分配金利回りランキングや、売れ筋の毎月分配型投資信託を購入したくなります。
ですが、やはり合理的に考えた場合は、インカムゲインとキャピタルゲインは分けて考えるべきではないように思えます。
シニア時代こそ、現役時代と同じ合理的な投資対象で運用を続け、定期的に定率で資産を取り崩しながら運用をしていくことが、結果として資産の寿命を長くし、運用益と資産残高を大きくする可能性を高めるのではないでしょうか。
まとめ:お金に色をつけないクセをつけましょう(とはいっても難しいですが)→iDeCoやNISAを使うのが早道
インカムゲインとキャピタルゲインについてのポイントをまとめます。
・インカムゲインとキャピタルゲイン、どちらも「同じお金」として考える
・利回りや配当を重視しすぎない
・資産形成期は利益が出たら、再投資して複利効果を大きくする
・資産の取り崩し時期も「同じお金」として運用しつつ、定期・定率で取り崩す
お金に関しては、誰しも大切に考えますので、それゆえに「同じお金」だとしても少し歪んだ考え方に陥りがちです。
大切なお金だからこそ「色をつけないクセ」をつけたいものです。
とはいえ、人類特有の頭のクセを治すのは難しいのも現実です。
だからこそ、iDeCoやNISAといった、ある程度、投資対象が絞られているもの、合理的なもの、引き出しがしにくいものを利用することも大切だと思います。
税制面で優遇されていますしね。