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株式チャートにおいて、下向きに終わっていると「上がる」と感じ、上向きに終わっていると「下がる」と感じるのが人の特徴?
こんにちは。
金融教育研究所の佐々木裕平です。
先日論文を読んでいると、非常に面白いものがありましたので、ちょっとご紹介してみたいと思います。
それは、テクニカル分析という(未来の値動きを過去から分析するという)分析方法において、多くの人に共通の考え方の癖があった、というものです。
引用元:Jstage
FX投資経験者のチャートに基づく判断
前提として「株式投資においてチャート分析(テクニカル分析)は当たらないし、無意味」です。
最初に記しておきますが、金融経済学の現代ポートフォリオ理論の根っこにある「効率的市場仮説」の元では、チャート分析やテクニカル分析は無意味です。
時間の無駄とも言われています。
なぜでしょうか?
それは、人間というスーパーコンピューターの頭脳が数十億人分集まっていて、それぞれ情報を効率よく処理している存在、それが市場だと考えられるからです。
- すべての情報は株価に即座に織り込まれる
- 過去と未来の値動きに関連性はない
- 未来はいまわかっていない情報によって価格が変化する
- 結果として値動きはランダム・ウォークする
- だからいま、どんなに分析しても無意味
こういう考え方が「効率的市場仮説」です。
ノーベル経済学賞を受賞した各理論もこの前提に基づいています。
でも最近の研究では効率的市場仮説は崩されつつある
・・・というのがまあ、金融経済学の基本なのですが、最近の研究では
- 効率的市場仮説って完全じゃないよね?
- アノマリー(理論で説明付かない抜け道・裏技的なもの)があるよね
- その非効率な部分をうまく使えば大儲けできるよね?
という意見も出てきています。
もしかすると、数年後にノーベル経済学賞をそのような理論が受賞するかもしれません。
最近読んでいる本では「適応的市場仮説(?)」などとも言うらしいです。
理論は常に進化していくのですね。
ただ、現状ではやっぱりチャート分析(テクニカル分析)やファンダメンタルズ分析は無意味だろう、というのが学術派の主な主張です。
チャート分析では、どういう形になっているかで、人の心理的な回答が変わる傾向にある
さて、冒頭の論文では、
いろいろなランダムなチャートを被験者たちに見てもらって、どう動くかな? というアンケートを取っています。
(※そもそも現実の値動きもランダムなのですが)
(※でもランダムなものを見ると、脳が法則性を素早く見つけたがる(代表制ヒューリスティックス:早とちり)癖が働いてしまうのが人間の困ったところです)
その研究結果によりますと、
- 人はチャート(グラフの形)が↓向きに終わっている→そろそろ上がる気がする
- 人はチャート(グラフの形)が↑向きに終わっている→そろそろ下がる気がする
という風に感じてしまう、という結果になっていました。
これは行動経済学の一例では「ギャンブラーの過ち」などとも呼ばれる人間の考え方の癖ですね。
その先にあるのが、保守性の破綻による、極端な考え方への反転、というところでしょうか。
大切なのは、人がランダムなものに対しても、何かしらの意図を感じて、自分なりの推理を繰り広げてしまう、ということなのかもしれません。
(だから資産運用で「あっ! 私、秘密の法則を大発見した!」と思い込むのは危険です)
チャート分析で当たる法則を発見すれば、それこそノーベル経済学賞を受賞できるかもしれない
巷では「チャート分析やテクニカル分析で大儲け」という文言をたまに(頻繁に?)目にします。
でも、前述のとおり、経済学上は効率的市場仮説がノーベル経済学賞を受賞しています。
これってどっちが間違っているのでしょうか?
また仮に本当にチャート分析に法則性があれば、それは効率的市場仮説を崩したことになります。
その証明をすれば、やがてその人はノーベル経済学賞を受賞できるかもしれません。
ちなみに筆者は、「効率的市場仮説は概ね正しいが、どうやら市場は効率的な状態と非効率的な状態の配分が増えたり減ったりしながら、循環しているようなところもあるので、時々、効率的市場仮説が崩れる(弱まる)んじゃないかな。
でも、それがみんなにわかると、価格に織り込まれてしまって、自然と消えていくだろう。
それでさらに、人の心理的な影響、たとえばコロナショックとかでは、損失回避的な行動が大きくなって、わざわざ安いときにたくさん売って、そこにこそ大きなチャンスが生まれるんじゃないかな? そのようなときは、効率的市場仮説が大きく弱まっているのかな?」
などと考えています。
それではまた。