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無差別曲線と投資家の効用
こんにちは。
金融教育研究所の佐々木裕平です。
私は普段、金融教育としての講座・セミナー、記事や書籍の執筆を行っています。
それと同時に、お金と人の幸せについても、時々考えています。
今回は、金融経済学での無差別曲線とは何か? からヒトとお金の関係について考察してみたいと思います。
投資家の無差別曲線とは?
ノーベル経済学賞もりもりの現代ポートフォリオ理論では、効率の良いポートフォリオを見つける際に、無差別曲線について考えます。
無差別曲線とは、その曲線状であれば、リスクとリターンの数値は異なっても、投資家の期待効用が等しくなる、という曲線です。
無差別と言うと、堅苦しいですが、これはその曲線状であれば、どこでも同じでっせ、お客さん! という意味での無差別=どこでも、なのです。
大変に乱暴に言いかえれば、「その線上のポートフォリオなら、どこでも同じ満足度曲線」ともいえるかもしれません。
無差別曲線は、山の等高線と同じ
頭の中で想像してほしいのですが、縦にリターン、横にリスクをとったグラフがあるとします。
このグラフを四角い画面としますと、
最も投資家の効用が高いのは、どこでしょうか。
正解は左上です。
すなわち、期待リターンが最大で、リスクが最小の部分です。
つまり、左上になるほど、投資家の効用が高い。
反対に、最も投資家の効用が低いのはどこでしょうか。
正解は右下です。
右下は、期待リターンが最低で、リスクが最大だからです。
つまり、右下になるほど、投資家の効用が低い。効率が悪い。
そして、無差別曲線は、左上から山の等高線のように、降りていきます。広がっていくイメージですね。
何本も設定することができます。
そして、その現実のポートフォリオと照らし合わせて、無差別曲線が最初に遭遇する点こそが、効率の良い最適(リスク資産における)ポートフォリオだと考えられています。
だから、投資をする際は、このポートフォリオを選択すればよいよね。
というのが、現代ポートフォリオ理論の一つの回答ですね。
個人の幸せとお金の関係に無差別曲線を引いて見ると、一番幸せな状態が見えてくる?
ちなみにこの無差別曲線は、人によって異なっています。
そして肉眼で確認することができません。
理論上の曲線なのですね。
まあ、それは置いといて。
では、資産額と幸せについても、無差別曲線を当てはめるとどうなるのでしょうか。
もしこれで正解ががわかれば、人が一番幸せになれる資産額がわかるかもしれません。
ちなみにアメリカの大学の研究では、多くの人にとっては、年収700万円程度だといわれています。
今度は縦軸に、効用(幸福度)を取ります。
横軸に、資産額を取ります。
通常、人の効用は、凹関数ではないか、とここではします。例外はあります。
プロスペクト理論のようなカーブですね。
凹関数というのは、山なりなカーブです。
なぜか?
それは人には限界効用の逓減があるから、です。
お金の場合、あればあるほど、正比例して幸せにはなっていきません。
一杯目のビールが美味しいが、おいしいのはせいぜい数杯程度、何百杯も飲めば、多くの人は、「もういらない」となり、ビールから満足度(効用)を得られないのと同じような理屈です。
お金もあればあるほど、幸せ、ではないのかもしれません。
無差別曲線を引くと、そこそこの年収が幸せであり、多すぎる資産は、少ない資産の人と同じような幸福度になってしまう?
では今度は無差別曲線をやはり左上から引いていきます。
左上は、資産額が少なくとも、とても幸せな状態です。
まあ、現実には存在が難しいです。
そこから等高線をどんどん引いて、広げていきます。
すると、先ほどの収入のラインとぶつかります。
それは、必ずしも高収入ではないのです。
そこそこの収入が一番効用が高い、ということになるのかもしれません。
もっと等高線を下げていくと、とてもお金持ちのラインと被ります。
でも、同時に、あまりお金持ちでないラインとも被ります。
無差別曲線では、曲線状ならどこでも同じような満足度、ということでした。
つまり、ものすごいお金持ち≒あまりお金持ちでない人 となるのですね。
いやはや、じつに面白いです。
そう考えてみると、人生、やはりそこそこのお金持ちを目指すことが、人生を最も楽しむための秘訣、なのかもしれません。
それではまた。