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子どもが生まれたら、将来のための教育資金を準備したい、という声はよく聞きます
こんにちは。金融機関から販売マージンなどを受け取っていない中立的なアドバイザーとして講演執筆活動をする佐々木裕平です。
子どもが生まれると、うれしい反面、今後の教育資金(学資)の準備や親に万が一のことがあった時の生活費などを考えると、不安がつきまとうものだと思います。
そのため、子どもが大きくなる前に、できるだけお金を大きくしておきたいものです。
そんな時に、選択肢として挙げられるのがNISAと学資保険です。
この二つの仕組み、どのように違い、どのように考えるべきなのでしょうか。
NISAと学資保険、それぞれの特徴は?
まず、NISAから見ていきましょう。
NISAとは、金融庁管轄の非課税制度のことです。ザックリ言いますと、中長期的な投資を促す口座(NISA口座)を開設して、株式や投資信託などで、子どもや孫の将来に向けた資金の準備も「投資」で行うことができる制度です。
とはいえ、使い道は自由なので、老後のための仕組みとしても使えます。
次は学資保険です。
学資保険とは、民間の保険会社の商品です。一般的には契約した保険料を支払うことにより、あらかじめ設定した時期に給付金としてまとまったお金を受け取ることができます。また、子どもや親に万が一のことがあった場合には、保険金として給付金を受け取ることができます。さらに、契約者(親)が亡くなった場合には、それ以降の保険料が免除されます。
ここまでをまとめますと、
・NISA「非課税制度で投資を行い、将来のお金を準備するもの」
・学資保険「契約した保険料を支払うことにより、将来の学資などを準備しつつ、万が一の事態に備えるもの」
と、このようになっています。それぞれの性質が異なっていることに注意が必要です。
NISAと学資保険の特徴・メリット・デメリット
では、学資の準備として考えた場合、どちらにどのような特徴・メリット・デメリットがあるのでしょうか。
まず、NISAの特徴ですが、年間360万円まで投資をすることができます。
生涯最大で、1,800万円まで、そして、その枠は何度でも再利用可能なのです。
メリットとしては、通常の証券会社などで行う口座と異なり、運用益等が非課税になります。一般的に投資で得た利益にはおよそ2割の税金がかかりますが、この部分が非課税になる点が通常の口座よりも有利です。それ以外のリスクなどは同様です。
デメリットは、金融商品を購入するので、値動きの変動がある、ということです。
次に、学資保険の特徴です。一般的に「貯める」と「備える」ことを目的としています。
メリットは、商品にもよりますが、祝い金として子供の成長に合わせてお金を受け取れることです。ただ、これは自分の払い込んだ保険料の一部が戻ってくるだけで大きく増えているわけではありません。そして、保険ですから万が一の時には保険金が受け取れます。
デメリットとしては「増やす」という力が、現在の低金利の時代ではとても小さいことです。
NISAでの投資と学資保険は、最初から役割が違うことに注意が必要です
どうでしょうか。それぞれの特徴・メリット・デメリットを見たところ、役割が大きく違うことが分かってきました。
つまり、ジュニア投資NISAの役割は学資などを、投資を通じて「増やす」ことを目的としています。
ただ、投資には元本割れ(損すること)が付きまといます。将来、大きく元本を損なっている可能性があります。そして、その状況は分散投資をしていても数年続く可能性がやはりあります。相応の投資の知識がないと、慌てて安値で売却してしまう可能性もあります。
また、安全性を重視しすぎると、リスクが低い状態となり、期待される収益率が下がってしまう可能性もあります。これは、一般的にリスクとリターンがおおむね比例する性質を持っているからです(もちろんリスクが高いと期待収益率が高い反面、下落時にはより一層の値下がりが起こる可能性があります)。
すなわち、学資として準備はしたいけれど、減ると困る人(どうしても減らしたくない人)にとっては、NISAが選択肢から遠ざかってしまうことになります。
このようにNISAでは、増える可能性と減る可能性が同居しています。
一方で、学資保険では現在のように低金利ですと、ほとんど大きくなりません。すなわち「増やす」ことを目的としてはほとんど使えません。保険会社もボランティア活動ではありませんので、全体としては払い込んだ保険料に対してマイナス(保険会社にとっては利益)になるように保険商品は設計されています。そのため途中で解約すると元本割れをすることもあります。
単純に「貯める」だけなら銀行や郵便局の方が、元本割れがない(正確には、倒産しても1千万円とその利息分まで保証)ので、より流動性と安全性は高いと考えられます。
現在のような低金利時代では、学資保険の役割としては万が一の事態に「備える」ことがメインとなってきます。
どちらか一方ではなく、幅広い選択肢も視野に入れる
行動経済学などの分野の研究では「人は合理的ではないのではないか」という立ち位置で考えます。言い換えれば「あまり賢くないかもしれない」のが普通、ということかもしれません。
そのため、どうしても人は一つの仕組みや金融商品で「貯めながら、増やしつつ、備えたい」と考えがちです。ですが、基本的に複雑な金融商品になればなるほど、私たちが損をしやすくなってしまいます。これは、相手がボランティア活動ではなく、手数料ビジネスなので、複雑になるほど手数料が多くかかるためです。こればかりは、仕組み上仕方がありません。
そのため「増やす」なら(リスク許容度の範囲内で)「投資」でNISAを(他にも、iDeCoを)考慮することが重要です。また、「貯める」だけなら、銀行や郵便局が、基本的にコストがかからずに有利です。そして、万が一の事態に「備えたい」なら学資保険を(もちろんその他の生命保険なども)考慮すべきです。
更に一歩踏み込んで言うと、安全に増やしたい場合、最も手軽で、便利で、途中解約しても元本割れしないもの、としてあげられるものがあります。
それが、個人向け国債変動10年です。
一般的に銀行や郵便局の預金や貯金よりも金利が有利です。
また、保護者(親)に万が一のことがあったことに備えたい場合は、シンプルな生協とか、県民共済などの、掛け捨ての、生命保険が割とまっとうな生命保険だと思われます。
もちろん、NISAで運用するなら、投資対象は全世界株式インデックス型投資信託が経済学上、望ましいと思います。
低金利・低利回りの時代だからこそ、お金の役割分担をしっかりと決めることが重要ではないでしょうか。