お金の効用と感応度低減性の一例|行動経済学

お金が増えるほど幸せになれる、だから金融教育をすれば、多くの人が幸せになれる……。

昔の私はそう思っていました。

もちろん、いまもその思いの根本は変わりません。

ただ、お金の勉強をしていく中で、どうもこのように単調に人の効用(幸せ)が上昇していかないのではないかと思うようにもなりました。

どういうことでしょうか。

 

Contents

効用には単調性があるが?

こんにちは。

金融教育研究所の佐々木裕平です。

金融経済学の中に、効用の単調性という言葉があります。

一例をあげると、お金持ちになればなるほど、人は幸せになる、という状態です。

昔は私もそう思っていたのです。

しかし、現実の人間はそう単調ではありません。

それは感応度低減性があるからだと思います。

 

生ビールと感応度低減性の一例

一例として生ビールで考えてみましょう。

生ビール。最初の一杯はとてもおいしいですね。

「うん! おいしい!」

じゃあ、二杯目は?

「やっぱりおいしい!(笑)」

でも、効用(幸せ)を計ってみると、一杯目の効用よりも二杯目の方が小さいですね。

じゃあ、十杯目の生ビールは?

「も、もういらない。飲んでもあんまりおいしくない」

そうですね。しっかり満たされてしまって、ビールから得られる効用はとても小さいものになってしまいます。

これが効用の感応度低減性ですね。

もしこの感応度低減性がなければ、二杯目のビールは一杯目より、もっとおいしくなり、十杯目はとてつもなくおいしくなるでしょう。

しかし、そうはなりません。

 

効用の単調性は正しいけれど、例外もあるのでは

このように、効用の単調性というのは確かにあります。ただすべての状況で当てはまるものではないかもしれませんが。

ひるがえって、お金の話に戻しましょう。

お金持ちになればなるほど、幸せになれる(効用の単調性)と思っていた昔の私。

しかし現実の人間は、お金持ちになればなるほど、一円あたりから得られる効用(幸せ)が小さくなってしまうのかもしれません。

それこそ、飲みすぎたビールのように。

 

お金持ち=幸せ とは限らない

ということは、お金持ち=幸せ とは限らないのかもしれません。

ビールの場合、もしかすると、一杯目、二杯目のビールでやめておいた方が、ずっと幸せかもしれません。

ということは、お金の場合も、年収が数百万円程度(例えば700万円)というところが、もっとも幸せを感じやすいところなのかもしれません。

反対に多すぎる年収や、多すぎる資産は、人の幸せを阻害する要因にすらなるのかもしれません。

 

幸せになればなるほど、幸せから遠ざかってしまうのが私たちニンゲンなのかも

これは「幸せ」という感情だけでもそうかもしれません。

幸せになればなるほど、幸せを感じにくくなってしまうのかもしれません。

  1. 客観的に見れば、とても幸せなのに、不幸に感じている。
  2. つまらない日常だとうんざりしてしまう。
  3. 幸せに飽き、常に変化を求め、結果として不幸になってしまう。

そんな困った現象も、ニンゲンならではなのかもしれません。

お金は大切。

でも、お金の教育をするときは、同時に心の働き(エラー)についてもきちんと解説をしていかないと、ひょっとしたら人の人生をかえって「つまらないもの」にしてしまうのかもしれませんね。

これからはお金の教育と心の働き(エラー)についてもセットで提供していこうと思いを新たにしました。

それではまた。

 

Visited 10 times, 1 visit(s) today

関連記事

  1. これで分かる!老後2000万円足らない問題【金融庁】レポート…

  2. リスクってなに?全世界に分散した株式の具体的なリスクは?初心…

  3. man sitting beside side table

    趣味としての株式投資勉強ブログ【後編】非効率かもしれないけれ…

  4. 佐々木裕平のお金の学校

    【動画】学校では教えてくれないお金の教養 1時間版

  5. どうして人にはお金が欲しい、お金持ちになりたいという欲求があ…

  6. 長期分散投資をしたらうまくいく理由・標準偏差・正規分布・統計…

よく読まれている記事


ポートフォリオのつくり方

新NISAどの投資信託がおススメ?経済学上は【全世界株式インデックス型投資信託】【投資信託の銘柄選び方】

つみたて投資の終わり方

ファンドラップが不要な理由

学資保険とNISAどっちがいい?

期待リターンが面白い!

最近の記事 ランダム記事
  1. a party banner hanging over a table in a restaurant
  2. a hand holding a long silver chain with a diamond on it
  3. man in white dress shirt wearing black framed eyeglasses
  4. boy wearing gray vest and pink dress shirt holding book
  5. man sitting beside side table
  6. black and silver laptop computer
  7. pile of books
  8. cheerful young woman screaming into megaphone
  9. woman with a sign
  10. close up photo of monitor
  1. 佐々木裕平
  2. 投資信託 損得事例

アーカイブ

最近の投稿

PAGE TOP