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行動経済学入門 心の会計 メンタル・アカウンティングの一例
筆者は先日、小銭入れを拾いました。
すぐそばに交番がありましたので、早速届けました。
どのような応対があり、手続きがあり、小銭入れのお金はどうなるのでしょうか?
交番では、お巡りさんが丁寧に対応をしてくれ、その場で書類を作成してくれました。
驚いたのは、現在は3か月間落とし主が現れなかった場合、拾得物は拾った人がもらえる権利が生まれる、というものでした。
昔は半年や1年でしたが、法改正? により変わったとのことでした。
その後、無事に持ち主が現れました。めでたし、めでたし。
さて、今回の行動経済学入門:具体例は、心の会計(メンタル・アカウンティング)です。
行動経済学入門:心の会計(メンタル・アカウンティング)とは?
この心の会計(メンタル・アカウンティング)とは、金銭感覚が本来の金額とは異なる価値観を生み出すような場合に使われます。
金銭「感覚」とありますように、この感覚は人それぞれだと思われます。
例えば、味覚は、同じ料理を食べても
- 美味しいと思う人
- 美味しくないと思う人
これらは人それぞれ異なります。それは味覚には絶対的・客観的な尺度がなく主観的な「感覚」で判断されるからです。
一方で金銭は「金額」という尺度が一応ありますが、その人の金銭「感覚」によって価値が変わります。
そう、心次第でお会計が変わるのですね。これが心の会計(メンタル・アカウンティング)です。
落とした本の価値はいくら?
ここからは、空想・フィクションです。現実の出来事などとは一切関係がありません。
山田さんはある日、定価500円の本を仕事帰りの本屋さんで買いました。
「やったー、ついに手に入れたぞ。家に帰ってからゆっくり読もう」
帰りの電車に乗り込んだ山田さんは、その日の疲れからか、つい眠ってしまいました。
気が付くと、もう下車駅です。
「あっ、もう駅だ。危なく寝過ごすところだった」
山田さんは急いで電車から降りました。
「はっ、しまった! 本を席に置いたままだ!」
山田さんが気づいた時には、無情にも列車の扉は閉まり、彼方へと走り去っていきました。
「うーん、どうしようか。駅員さんに知らせて、遺失物届を出そうかなあ」
でも、その日の山田さんはもう疲れていたので、さっさと帰ることにしました。
「まあ、500円の本くらい、また明日買えばいいか!」
落とした小銭入れの価値はいくら?
翌日、山田さんは改めて本を500円で買うことにしました。
本屋さんのレジで小銭入れから500円を出そうとします。ちなみに、この小銭入れは、山田さんの愛娘が山田さんに誕生日プレゼントとしてくれたものでした。小銭入れ自体は定価500円です。それでも小学生の娘が自分のお小遣いを貯めてまでくれたものですので、山田さんは大切にしています。
「お、ちょうど小銭が合計で500円ある、小銭入れが軽くなってラッキー」
小銭入れが軽くなった山田さんは、足取りも軽く列車で帰路につきました。
そして、いつもの下車駅に着いた瞬間
「しまった! 小銭入れがない! きっと、さっきの本屋に置き忘れてきてしまったんだ!」
この日も、山田さんは疲れていましたが素早く本屋さんへ電話を入れました。電話の結果は、レジで預かっている、とのことでした。
回収は明日でもいいのですが、山田さんは、反対方向の列車に乗り込みました。定価500円の小銭入れの回収に向かいました。
その後、無事に本屋さんで大切な定価500円の小銭入れを回収しました。
めでたし、めでたし。
行動経済学入門:具体例 心の会計(メンタル・アカウンティング)同じ定価500円でも、感覚の価値は異なる?
いかがでしたでしょうか。
山田さんは二日連続で忘れ物をしました。
- 500円の本
- 500円の小銭入れ
両者は同じ500円の金額です。しかし、その後の山田さんのとった行動は全く異なるものでした。
つまり、これは同じ金額でも、山田さんにとっては、本よりも小銭入れの方がずっと価値があるものだった、ということです。
このように、金額は異なっても、価値の感覚はそれぞれ異なります。つまり、心によって、会計が異なるのですね。
他にも心の会計(メンタル・アカウンティング)には様々な種類や状況があります。
ちなみに、伝統的な経済学では、同じ500円の金額のものを失ったのですから、同じ効用であり、同じ行動をとるはず、だと考えられるのではないでしょうか。人が機械的なら、そうなりやすいかもしれません。でも人には心があるので、そうはならないこともあるのですね。
行動経済学入門:具体例 心の会計(メンタル・アカウンティング)まとめ
今回の行動経済学入門:具体例は心の会計(メンタル・アカウンティング)でした。
現実世界では、
- どうしてあの人はあんなものを大切にしているのだろう、変な人だ
- あんなことをしていて、恥ずかしくないのか、理解不能だ
- あんなことを一生懸命にやって何の意味があるのか、非効率だ
などと、自分や世間一般の尺度で物事を計ってしまいがちです。
しかし、私たちには心があり、必ずしも同じ尺度で計っているだけではないのかもしれません。
心の会計(メンタル・アカウンティング)の存在に気が付くと、周りの人の気持ちが少し分かり、より円滑なコミュニケーションがとれ、少しストレスが軽減するかもしれません。
あなたが重みを置いていることは、何でしょうか?