こんにちは。金融機関から販売マージンなどを受け取っていない中立的なアドバイザーとして講演執筆活動をする佐々木裕平です。
今回は、昔に書いた記事を2024年版に直して、ご紹介します。
Contents
バランスファンドって必要? 不要? 「佐々木の結論は不要!」 メリット・デメリットについて知っておきたい4つのポイント z8
バランスファンドは、どんなファンド?
投資をしていると、バランスファンドという言葉をしばしば耳にしますね。
これって、どんな内容なのでしょうか?
自分のポートフォリオに組み入れるべきなのでしょうか?
また、メリット・デメリットはどんなものがあるのでしょうか?
気になるこれらについて見てみましょう。
まず、バランスファンドという名前からすると「何かのバランスが取れているのだな」という気がしますが、一般的には複数の資産クラスを組み合わせている投資信託を指すことが多いです(ちなみに資産クラスとは「国内債券・国内株式・先進国債券・先進国株式」などの大きな資産の区分を指します)。
つまり、バランスファンド自体のリスクとリターンは組み合わせによって、それぞれ異なるので、人によっては必ずしもバランスが取れている(その人に合っている)わけではない、ということですね。
また、投資家が10人いれば、投資に対する考え方も10通りあるはずですので、万人受けするバランスファンド、というのはないかもしれません。
バランスファンドの一例の組み合わせとしては、次のようなバランス型があります。
- 4資産均等型(国内債券・国内株式・先進国債券・先進国株式を4分の1ずつ)
- 6資産均等型(上記4資産に新興国の債券・株式を加えて、6分の1ずつ)
- 8資産均等型(上記の6資産に国内と先進国の不動産を加えて8分の1ずつ)
- 退職時期などの年に合わせて、内部の資産比率が変動するタイプ(ターゲットイヤー型)
- その他にも、様々な資産クラスを入れていたり、比率が異なっていたりする多様なバランスファンドなどが存在
こんなにあると、どれが良いのか迷いますね。でも基本的には「4資産程度(の市場平均)に分散できていれば、理論上は良いだろう」と考えることもできます。
それは、誰にも未来を正確に予測することができないので、分散投資するのが合理的な一面があるからですね。
逆に言えば、「これが今年のベストな配分割合」を表しているバランスファンドと呼べるものを事前に探すことができません。
未来がランダム・ウォーカーですので株価もランダム・ウォーカーとなります。
こればかりはしょうがありません。
バランスファンドのメリットとは?
ザックリとバランスファンドのメリットをまとめるとこんな感じです。
- 分散投資の知識などがなくても、自然と分散投資ができる
- 内部で自動的に「リバランス」と呼ばれる運用をしてくれるものもあるので手間いらず
- 経済状況などによって、自動的に配分を変更してくれるものもあるので分析いらず
- 投資対象を分析して、頻繁に入れ替えたりしてくれるものもある
一見すると、良いことだらけですね。ですから、バランスファンドは、資産運用の理論や用語などが良く分からない人にとっては、都合が良い金融商品だな、と考えることもできます。
ただ、上記はそのままデメリットに直結するんです。
バランスファンドのデメリット 効率が悪くなるかもしれない
バランスファンドのデメリットをまとめると、次のような感じです。ちなみに、上から「けっこう深刻な影響を運用成績に与えるだろうな」という順に並べています。
- 信託報酬が高いものがある
- 何に投資をしているのかが分かりにくい
- バランスをとらなくてもいい人でも、バランスをとってしまいがち
- 複数のバランスファンドを保有していると、管理やリバランスなどの運用がしにくい
どうでしょうか。何がデメリットなのか分かるものもあれば、分かりにくいものもあります。順を追って見てみましょう。
まず、1「信託報酬が高いものがある」から見てみましょう。
コストとは、分散投資の世界においては、売り手の収益であり、個人投資家にとってはただのマイナス要因でしかありません。
そのため、信託報酬が0.2%以上のものは避けるべきです。
バランスファンドに限らず、投資の実質リターンは「リターン-コスト」です。
そのため、コストが高いということは、単純に実質リターンを押し下げるだけなのですね。
リスクとリターンのバランスを低い方に持っていくのは(それがその人の希望なら)構わないのですが、その状態でコストが高い1.3%などですと、困ります。
ちなみに1.3%はアクティブタイプと呼ばれる投資信託の平均コストです。
例えば、平均リターンが3%でコストが1.3%なら、3%-1.3%=1.7%となり、実質リターンが低くなってしまいます。
これでは長期間投資をしても、正しい見返りが得られにくくなってしまいます。
だからバランスファンドでもコストが高いものは、そもそも避けるべきです。
次の2「何に投資をしているのかが分かりにくい」も深刻です。
だって、投資ではただでさえ未来が不透明なものです。
その中でできるだけ過去から見た期待リターンやリスクが数値として出ているモノを選ぶことが重要です。
ところが、そこが良く分からないと、地図を持たずに知らない国をドライブするような感じになってしまいます。
また、ファンドによっては、配分が途中で変更になることがある点も、同様の注意が必要です。
バランスファンドだからこそ、投資対象が分かりやすい、シンプルなものが必要です。
3の「バランスをとらなくてもいい人でも、バランスをとってしまいがち」は多いパターンだと思います。
例えば、企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)での投資の場合、原則として60歳まで引き出せません。
極論すると、リスクとリターンは、現役時代は「とても高くても構わない」と考えることもできます。
それなのに、バランスファンドを重視しすぎてバランスを低くとってしまうと、人によっては思ったよりも資産形成が不十分な状態になる可能性もあります。
ですからバランスファンドを検討する際は、その組み合わせが自分の希望する期待リターンになっているのかを理解するべきです。
4の「複数のバランスファンドを保有していると、管理やリバランスなどの運用がしにくい」というのもよくあるケースです。
バランスファンド一つだけ保有していると、なんとなく不安……という人もいるかと思います。
そのため、「安定型のバランスファンドに成長型のバランスファンド、後は・・・」という具合にタイプの異なるバランスファンドを複数保有しがちです。
上記のように複数のバランスファンドなどを保有すると「なんとなく安心」な気がしないでもないですが、逆に不安になります。
なぜかというと、プロのツールでも、複数のバランスファンドを組み合わせた場合の「全体でのリスクと期待リターンなどの数値が何%なのかが分からない・分かりにくい」からです。
また、複数保有すればするほど、保有銘柄が多くなり、結果としてシンプルなインデックス型投資信託を最初から保有している場合と比較して、値動きがほとんど同じになるのに、リターンが振るわない、ということになりがちです。
ただでさえ、投資は不確実性が多いものですから、この良く分からない状態で長期投資をするのは、不安です。
せめて期待リターンとリスクに関しては、自分で把握しておいて、自分でコントロールしたいです。
だって、大切な自分のお金ですから、最低限、把握すべきだと思います。
もちろん、実際のリターンは毎年変化しますし、想い通りには行きません。
一寸先は闇です。でも、統計的なデータなのだから、せめて、それくらいはあてにしたいと思います。
また、確率の問題ですから、長期間行えば行うほどに、確率が姿を現しやすくなるもの、また一つの統計上の現実でもあります。
そんな状態ですから、リバランスと呼ばれる運用も、一つのファンドだけ保有して自分のお金を100%それにまとめていれば、それだけで完結しますけど、バランス型を保有する人の中には、複数保有している人もいると思います。
中には自動的にリバランスをしてくれる概念のないファンドと併せて複数保有している人もいるかもしれません。
そうなると、全体としては、リスクとリターンがころころ変わりかねない、というか把握が難しいですことになります。
特に、自分でアセットアロケーション(資産の組み合わせ)ができている人が、自分のポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)に良く分からないバランス型を入れると、せっかくシンプルだったものが、全体では「よくわからないもの」になってしまうのでおすすめできません。
結局シンプルなバランスファンドを一つくらいに絞って保有するのが、理論上は合理的になるのだと思います。
これならいいかも!バランスファンドの特徴
それでは、前述のメリット・デメリットをふまえて「買ってもいいかな?」と思えるバランスファンドの特徴をまとめてみましょう。
ちなみにこれは「どれかをクリアしていればOK」ではなくて「できるだけ全部をクリアしているのが望ましい」という感じです。
- 信託報酬が02%より低い(購入時手数料は無料・ノーロードから選ぶ)
- 名前や目論見書などから、中身がすぐに分かるもの!(バランスファンドだからこそ、投資対象が分かりやすいインデックスタイプにする)
- 長期でやるなら、できれば株式主体!あるいは、何割株式が入っているのかが分かるもの(一例:株式60・株式80など配分が一目で分かるもの)
- バランスファンドだけでいくなら、できるだけ一つに絞る
上記を考えると、シンプルなタイプだけが残るのではないかと思います。
結論 それならやっぱり最初っから全世界株式インデックス型投資信託でOK!
とまあ、バランス型投資信託についてあれこれ述べてみました。
ですが、このように考えるとやっぱり最終的な結論は、「それなら最初から全世界株式インデックス型投資信託でいいではないか」となります。
・分散投資も十分にできているし
・コストも安いし
・期待リターンとリスクはわかるし
・預貯金と全世界株式インデックス型投資信託でリスクコントロールは容易だし
・理論上、もっとも1リスクあたりの期待リターンが高いし
……という感じですね。
以下コマーシャルです。
タイトル:
こんな方におすすめです。
- NISAやiDeCoのどちらかに興味がある
- 投資未経験・初心者で投資がちょっと不安
- 図解が豊富な読みやすい本が好き
読むとこうなります。
- 『NISA』『iDeCo』の始め方が分かる
- お金が貯まる・増える仕組みと正しい『お金の順番』が分かる
- 『選び方』とその理由もわかる
- どのような『お金の組み合わせ(ポートフォリオ)』にすると、お金が増えやすいか分かる
- 経済学に基づいた、お金の知識が身につき、一生役に立つ
- 値動きの『振れ幅(リスク)』と『よく起こりそうな増え方(期待リターン)』が数値としてわかる
- 経済学上、有効な『運用方法』と実は『大間違いの分析方法・運用方法』が理解できる
- 老後の『出口戦略』まで把握できる
本書の特徴
- 図解付きでスラスラわかる!
- ノーベル経済学賞の理論を使えば、誰でも、お金の達人になれる!
- 資産運用初心者の人が間違えがちなのは、『選び方』!
- お金の増え方の8割を決めるのは、『組み合わせ(ポートフォリオ)』!
- 運用方法はほったらかしが最善! もう間違った常識に騙されない!
- 増やしながら使う! 取り崩し・出口戦略まで!
★目次
はじめに 「NISA(ニーサ)とiDeCo(イデコ)で、誰でも効率よくお金を増やせる時代になりました」
第一章 投資が初めてでもわかる! NISAとiDeCoは、お得なお金の置き場所!
◆未来では、老後に受け取れるお金が減る。だから自分で効率よくお金を増やさないといけない
◆通常は百万円儲かったら、約20万円もの税金がかかるけど、NISAとiDeCoは税制優遇されててお得!
◆NISAはいつでも現金化できて、一人年間360万円。最大1,800万円まで投資できる!
◆NISAの始め方はとっても簡単
◆初心者の方向けの、NISAに関するよくある質問
◆iDeCo(イデコ)は「もう一つの年金」的なものだから、高齢期になるまで取り崩せない! でも所得控除があって、とってもお得!
◆質問:『何年間でお金が二倍になるの?』 回答:世界中の株式に分散投資する(全世界株式インデックス型投資信託を選ぶ)と、数年の時もあれば、十数年かかるかもしれない
◆仕事やお給料を変えなくても、将来のお金の増え方は変えられる! どの未来を選ぶかは、いまのあなたが決められる!
〇この章のまとめ
第二章 お金の増やし方のキホンを知っていれば、誰でも効率良くお金を増やしやすくなる!
◆お金持ちになる第一歩 お金の流れを整えるだけで『増え始める』
◆つみたて投資っていいことあるの? 積み立て投資にすることで効率がよくなる
◆投資がよく分からなくて怖い人は、小額から始めればOK! 自然に理解度が増していくんです
◆投資資金 すでにまとまったお金がある人はニーサの成長投資枠で一括投資も検討してみる
◆気になる疑問 積み立て投資と一括投資、どっちが成績は良くなる?
◆リスクは値動きの振れ幅! 長期間投資をしてもリスクは小さくなりません!
◆期待リターンとは? もっとも起こりそうな一年後の成績です
◆値動きの振れ幅=リスク はこんな風にブレる!
◆長期投資が博打的……ではなく、確率問題として処理できると考えられるポイント
◆100年に一度のショックは、けっこう多く起こる?
◆どうして世界中の株式に分散投資すると期待リターンが年率5%+長期金利くらいになると考えられるの?
◆もう間違えない! リスクと期待リターンおおむね比例する 差がつくポイント!
◆知っておくと心にゆとりが生まれるかもしれない……それが平均回帰性
◆あなたにも損失回避性があるかも? ここが増え方の分かれ道!
◆世界最高のスパコン = 『効率的市場仮説』がわかれば、誰でも投資の達人に!
〇この章のまとめ
第三章 初めてNISAとiDeCoをする人のための金融商品の選び方
◆NISAとiDeCoのメインの投資対象が投資信託な理由 誰でもカンタンに達人レベルの分散投資ができる道具
◆投資信託のメリット 1リスクあたりの期待リターンの効率が良くなる デメリットはコストが高い地雷商品があること?
◆経済学上の投資対象の正解はコレ! 全世界株式インデックス型投資信託
◆投資信託を管理している人が天才でも普通の人でも、平均には勝てないんです
◆じつは多くの場合、投資信託のお値段は気にしなくていいんです
◆アクティブ型投資信託を4つくらい保有するとインデックス型投資信託の成績になるから、最初から市場平均を選ぼう
◆債券主体の投資信託って魅力的に見える。でも買う必要はない
◆バランス型投資信託って良さそうだよね……ってちょっと待って、それ誤解です!
◆バランス型投資信託がダメだって? ……信じられない! という人のための思考実験
〇この章のまとめ
第四章 お金の増え方を8割決めるのは組み合わせ(ポートフォリオ)。ここを抑えておけば将来後悔しない!
◆なんと! 組み合わせ(ポートフォリオ)で増え方の8割が決まる! じっくり考えよう
◆ノーベル経済学賞受賞者のトービンの二基金分離定理が最適なポートフォリオを教えてくれる!
◆どこにお金を置くかで、こんなに増え方が違う! 長期投資だからこそ、学資保険よりもNISAとiDeCoが大切!
◆著者のお金の増やし方と取り崩し方法はこんな感じ。あなたはどう思う?
◆誰でも使えるポートフォリオのつくり方。資産額や年齢? いいえ。リスク許容度で考えるとシンプル
◆個人のリスク許容度やポートフォリオはフワフワと変化してしまうから、安全のために大きな幅を取った方が無難
◆具体的な一例で学ぶ、初めてのポートフォリオ作成! ちょっとの違いで二千万円も変わる!
◆コストが低いものに見直すだけで、将来の資産が六千万円に? 「積極的に増やしたい」人の一例
〇この章のまとめ
第五章 運用方法は簡単です。ですが、一般的には誤った常識が広まっています。
◆短期的にお金を儲けようとするよりも、「長期間ほったらかしにする」方が「うまくいく確率が上がる」と考えられるワケ
◆質問! 『株価などはランダム・ウォークする』って聞くけど、どうして?
◆長期分散投資がうまくいくと考えられる理由の一つは、ランダムだからこそ起きる『組み合わせ爆発』
◆急落した! 売った方がいい? 景気はグルグル循環するから、慌てないで!
◆大暴落はいつかきっと起こる……だからこそ、慌てない。未来のために下がり幅を再確認!
◆チャート分析・テクニカル分析は経済学上『かっこいいおまじない』だから、しなくて良い
◆ファンダメンタルズ分析は経済学上有効……だからこそ、無意味になってしまうワケ
◆近所で投資の話題が盛り上がり始めたら、要注意
〇この章のまとめ
第六章 取り崩し方法 増やしながらお金を使っていけば、老後は安泰かも。出口戦略も考えておきましょう。
◆増やしたお金を上手に使いたい! 取り崩し(出口戦略編)一例 預貯金だけだと物価上昇でお金の価値が下がってしまう
◆お金を減らさずに取り崩す方法 運用を続けながら、期待リターン内で取り崩していく
◆自分の『何か』を変えないから変わらない。でも、やる気が出すぎてもダメ
◆NISAとiDeCoを始めたいけど、家族が資産運用に懐疑的な時こそ、話し合いが大切
〇この章のまとめ
おわりに 筆者は不安で仕方がありません。
奥付
どうぞよろしくお願いいたします。